2016.11 経営コンサル事務所ニュース


戦略のミスは戦術ではカバーできない


永続発展する企業の条件の第7話です。

1.戦略のミスは戦術ではカバーできない

 経営コンサルという仕事柄、業績が低迷した会社や問題を抱えた組織を診ることが多い。業績が低迷した会社や苦境に陥った状況を見ると、その背景には必ず、過去の経営判断のミス、戦略のミスがあります。大きな経営判断ミスが長年に渡ってその会社に影響を与え、組織や社員を苦しめます。過去の経営判断ミスを何とかカバーしようと、もがき苦しんでいます。

 「戦略のミスは、戦術ではカバーできない。」

 大事なことは、経営の戦略ミス、判断ミスをしないで、正しい判断、決断をすることです。経営判断のミスは、企業規模の大小には関係なく、多く見られます。ミスをするのは企業だけでない。例えば、いま毎日のようにマスコミに取り上げられている東京都の豊洲移転問題や東京五輪会場問題もそうです。これらは、過去の経営判断のミスによって起こっています。重要事項を正しく判断するための仕組みや基準、コントロールタワーが組織の中にないことに原因があります。公共団体は潰れることはない(税金が無駄に使われることになる)が、企業の場合は経営判断の間違いが組織の存続を左右します。


2.社内に正しい経営判断ができる仕組みを作る

 経営判断のミスを防ぎ、正しい決断をするためには、組織の中に正しい判断ができる基準と仕組みを作ることが大切です。経営者(トップ)が正しく判断できるように判断の集約点、コントロールタワーを持つことです。そこでトップが情報を把握・検討し、正しい判断・決定をすれば、経営戦略・経営判断のミスがなくなる。

 過去に経営コンサルで支援をしたA社の事例をご紹介します。A社は社長が個人で事業を起こし、生業から家業、実業、事業へと事業を成長させてきました。社長は事業の拡大意欲が強く、バイタリティーとマンパワーで会社を大きくしてきました。事業の拡大と共に、人員や店舗が増え、社内のあらゆるところに様々な問題が起こっていました。社員の退職、人間関係のトラブル、モチベーション低下、顧客対応のまずさによるクレーム発生、業務のミスなど、様々な問題が発生していました。問題の根本原因は、社長独りで会社をコントロールするできる規模を超えていることでした。トップが全てを見ることは無理で、人を使って事業を経営する必要がありました。そこで3つの事に取り組みました。

 @会社の軸・基準作り(バックボーン作り)、A経営判断ができる仕組みづくり(方針管理制度の構築)、B評価賃金制度の整備、です。

 会社の軸(バックボーン)とは、経営理念⇒ビジョン⇒年度方針⇒部門方針⇒個人目標、といった経営の基準、軸になるものです。それらを縦に並べると背骨のように見えるため、「経営のバックボーン」といわれます。


 まず最初に取り組んだのが、経営陣・管理職と一緒にバックボーンを策定することでした。次に、ビジョンや年度方針に基づいて事業のPDCAを回す仕組みである方針管理制度を構築し、その制度に基づく経営会議を立ち上げました。そこで、方針通りに回っているかどうかを確認、検討しました。会社の重要な情報や問題がそこに集約され、検討・決定され、事業経営が行われるようにしました。また方針管理制度の構築により社長の判断基準が管理職と共通認識され、管理職が成長しました。結果、問題が大きくなる前に事前対応できるようになりました。3つ目に、公正な評価・処遇をするための評価賃金制度を構築しました。制度導入により社員の働きぶりを正しく評価できるようになり、人間関係の問題が落ち着くと共に、モラールがアップし、社員の能力開発が促進されました。それらの取り組みの結果、以前のように問題が多発することが少なくなりました。
 その後、A社は順調に事業を拡大し、経営支援の当初よりも社員数や店舗が増え、事業規模が倍に成長しました。

 会社の中に、正しい経営判断のできる基準や仕組みが整っているか、一度立ち止まって見直してみてはどうでしょうか?


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