2018.9 経営コンサル事務所ニュース



 永続発展する企業の条件の第25話です。

 多くの中小企業で、大きな問題なっているのが事業継承問題です。最近の景気向上により倒産件数は減少しているが、企業の廃業や解散は年々増加し、倒産の3倍以上の件数となっている。廃業や解散の増加の背景は、経営者の高齢化と後継者不足です。全国社長の平均年齢は61.45歳となり、最高年齢を更新し、経営者の高齢化が進展している(東京商工リサーチ調査)。
 事業継承問題は、今後更に切実な問題となってきます。


1.「業績が良くて50点、事業承継がうまく出来て100点」

  「業績が良くて50点、事業承継がうまく出来て100点」と言われます。人は生まれたら死ぬことは決まっている。社長になったら、いつかは辞めなければならない。バトンタッチをするべき時が必ず来る。自分が引退するときにバトンを渡す人がいなければ、ずっとやるしかない。そうなるとトップの身体的衰えともに、会社も衰退してゆく。
 そして、トップの寿命が会社の寿命となり、会社は取り返しのつかない状況になる。これまで築いてきた輝かしい経営者の功績も泡となり、多くの社員とその家族の生活が路頭に迷うことになる。


2.事業継承には時間がかかる

  後継者(経営者)の育成は、管理職の育成以上に時間を要する。社長業は1年や2年で身につけられるものではない。経営者の育成と後継体制づくりには10年程度の期間を要する。現社長が50才代であれば、後継者の育成と後継体制づくりを始める時期である。もし、60才代であれば早急に取りかかるべきである。
 まずは事業継承カレンダーを作ることをお勧めします。そうすると事業継承にかかる時間が分かります。残された時間は考えているよりも短い。


3.「組織経営」体制への移行

  中小企業は、トップに依存したワンマン経営であることが多いが、事業を後継者へ継承するには、ワンマン経営から「組織経営」体制へ移行することが大切です。後継者に今のトップと同じことを求めても無理です。後継者が会社経営できる体制に持っていくことが重要です。それが、「組織による経営体制」です。

 「組織経営」は、組織を作ったからできるわけではない。重要なことは、経営者と同じ意識、能力を持って部門を経営できる「部門経営者」を作ることです。その「部門経営者」が後継者を支え、後継者とともに会社全体を経営していく体制に持っていくことです。後継者が社長業を身につけるには時間を要するが、また部門経営者を育成するのも時間がかかる。そのためには、後継者とそれを支える部門経営者候補を一緒に育成することが大切です。


4.事業継承の事例

 A社は創業者が一代で上場企業にまで成長させた会社でした。これまでワンマン経営で会社を伸ばしてきたが、自分がいなくなった後の、会社経営に不安を感じていました。そこで、ワンマン経営から脱却するために、組織経営体制づくりに取り組みました。後継者と将来後継者を支えることになる若手管理職を選抜し、彼らでプロジェクトを組み、次のようなことに取り組みました。

 @現状認識:自社の経営実態分析、Aビジョン:継承後の自社の将来像、事業計画の策定、Bビジョンと実行可能な具体策・戦略目標の策定、C事業継承ストーリーの策定と、後継経営体制づくり

 このような取り組みにより、後継者と後継者を支える管理職(将来の経営幹部陣)が、一枚岩となってビジョン・意識を共有化し、組織経営体制づくりが進みました。
 その結果、事業継承がスムーズに進み、後継者が新社長になった後も順調に成長しています。


 「その内に何とかなるだろう」では、どうにもならないのが、事業継承問題です。経営者になれば、必ず退くときがきます。まだ時間が残されている内に、一度、打つべき手を考えてみてはいかがでしょうか。



●記事に関するお問い合わせは、
 株式会社トラストブレイン 秋月まで
 香川県高松市三条町209-1
 info@trustbrain-c.com