2019.3 経営コンサル事務所ニュース



 永続発展する企業の条件の第30話です。

 「経営がどうも良くない。どこに問題があるかを診てほしい」と相談され、会社を診て気づくことは、こういう会社の多くは、上も下も考え方や見ている方向がバラバラ、ということです。社長と役員のいうことが違い、管理職や社員、みんな各自の勝手な見方や考えで動いている。意識が統一されていない。これだけが問題ではないだろうが、まずこの一点を見ても「これはだめだな。」と考えさせられます。今回は、「経営情報のオープン化と共有化」(ガラス張りの経営)についてお話をします。


1.「経営とはトップの立てた方針を社員の能力と協力を通じて実現させるもの」

 事業が健全に成長していくためには、社員の意欲・能力を発揮させること、目標(方針)に向けてお互いに協力して仕事をすることが不可欠です。そうなるためには、すべての社員が、自分の働いている会社を「自分たちの会社」と意識して、仕事に取り組むことが大切になります。



 そのためには「経営情報のオープン化と共有化」が重要になります。いい情報も、悪い情報も社内にオープンにして、「会社の置かれている状況を、包み隠さず社員に伝えること」です。いわゆる「ガラス張りの経営」です。経営情報がオープンにされ、コミニュケーションが良い職場は、ルールや命令がなくても、社員が積極的に参加意識を持ち、自主的に判断、行動していく。やる気や協力意識が高まり、強いチーム力を発揮する。

 「知らしむべからず、寄らしむべからず」の経営では、働く人の意識を統一できないし、力を結集することもできない。チーム力が出せない組織は、機動力も結束力も発揮できない。1プラス1を3や5に高める力を持てない。
 中小企業では、経営情報(経営数字)を社員に見せていない会社も多くあります(営業マンの仕事のために売上程度はオープンにしているが・・・)。その背景の一番大きなものが、経営者の公私混同です。そして、中小企業の経営の問題の多くは、このトップの公私混同からきています。社員がいくら働いても、儲かった金が経営者やその一族の金に化けたりしていては、優秀な人材が育つわけもなく、また社員の意欲・能力・チーム力を引き出すこともできません。


2.経営情報のオープン化と共有化が再建の第一歩

 A社は長年赤字状態が続き財務状況は債務超過で、経営再建の依頼で支援した会社でした。経営状況を診ると、経営情報は社員にオープンにされておらず、会社は火の車状況にかかわらず、社員は危機感のない状態でした。社員に聞くと「社長はいつも会社は厳しいというけど、給与は毎月出てるし、賞与も僅かだが出ているので、そんなに会社は悪くないんじゃないですか」という答が返ってきました。

 最初、社長は経営情報のオープン化に反対でしたが、「いま全社員が自分たちの会社の危機的状況を理解し、一丸となって現状を打破しないと会社の将来はない」と説得し、経営情報と再建計画(再建の道筋)を全社員に発表しました。
 その時は戸惑いと不安も起こりましたが、「このままではまずい、自分たち自身で『自分たちの会社』を何とかしないといけない」と危機感と一体感が高まりました。そこから全社員一丸となった経営改善がスタートしました。新規顧客の開拓や既存顧客の掘り起こし、仕入品や仕掛品、生産工程の見直しによるコストダウンとムダの削減など・・・。現在もA社は事業を順調に継続しています。


 経営情報のオープン化はできているでしょうか。「ガラス張りの経営」とまではいかないまでも「すりガラス張りの経営」くらいから始めてみてはいかがでしょうか。



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