2019.10 経営コンサル事務所ニュース



 永続発展する企業の条件の第36話です。

  近年、倒産件数は減少しているが、その一方で休廃業・解散企業数は過去最多で推移している。その背景には、中小企業経営者の高齢化の進行があり、休廃業・解散企業のうち経営者が60歳、80歳代以上の割合は過去最高で進んでいる。

 そのため、特に中小企業の後継者問題が切実な問題となりつつある。前回、中小企業の後継者育成は、
 @「人は人に中で育てること(経験と他者交流を通じて学ばせること)」
 A「外部機関を活用しての育成が有効であること」
を説明しました。

 今回のテーマは「後継経営者が身につけるべき経営能力(マネジメント力)とは」です。



1.後継経営者が身につけるべき経営能力とは?―「事業戦略力と経営戦略力(事業センスと経営センス)」

 後継者に限らず経営者に必要な経営能力とは「事業戦略力と経営戦略力(事業センスと経営センス)」の2つです。

 事業戦略力(事業センス)とは、顧客や世の中の動きを先取りして、受け入れられる商品やサービスを発見、開発する能力です。言い変えれば、「儲けるための事業を見つけ、開発する能力」です。
 一方、経営戦略力(経営センス)とは、「経営のバランス能力」です。経営には、営業、生産、開発、経理、管理などの機能があります。それらを上手くバランスさせ、総合的に会社運営する能力が必要です。いくら優れた商品を作っても、販売(受注)力が弱ければ商品は売れず、売上確保もできない。また経理がしっかりしてなければ資金繰りに窮し、商品販売や人材確保もできない。経営とは全社的な視点から様々な機能(部門)をバランスさせ、運営していくことです。経営戦略力(経営センス)とは、「事業を存続させる能力」とも言えます。

 経営者になる者にとって必ず身につけるべきことは、それら2つのマネジメント力です。

●事業戦略力(事業センス):攻め・・・商品・技術・サービス・中核能力の開発、顧客・市場を開発する力
●経営戦力略(経営センス):守り・・・営業、生産、財務、人事、管理(マネジメント)をバランスさせる力


2.経営は「攻めと守り」のバランス

 また「事業戦略力と経営戦略力」は『攻めと守り』に分けられます。両方を兼ね備えた経営者が一番ですが、多くの場合はどちらかに優れている場合が多い。例えば創業経営者の場合、攻めの「事業戦略力」に優れた人が多い(逆に経営戦略力が不得意ともいえる)。事業規模の拡大に伴い、分業化されて様々な部門(部署)ができます。事業を永続するには「経営戦略力(経営センス)」で、各部門のバランスを取りながら事業運営することが求められます。創業した企業の多くが失敗(倒産・廃業)する背景には、この経営戦略力(経営センス)の欠如があります。経営バランスが欠けているため、苦労して新事業を起こしても、その後、長く事業を継続することができない。

<経営のバランス>



 前回後継経営者に求められる能力は「人の活かし方」で、「自分に欠けている能力を持つ優れた人たちを集め、組織の力として活かすこと」というお話しをした。
 事例としてホンダの創業者であり、事業戦略力に優れた本田宗一郎(技術・商品開発の「攻め」が得意)と、経営戦略力に優れた藤沢武夫(財務・販売の「守り」が得意)を取り上げました(前号参照)。
 現在のホンダがあるのは、本田宗一郎(攻めの天才)と藤沢武夫(守りの天才)が、お互いの不得意とするところ(自分に欠けている能力)を補い合い、他者の得意とするところ(自分と異なるタイプの他人を集め、組織としての力)を活かし、二人で経営バランスをとりながら事業発展させた結果です。
 もしそれがなければ、現在のような「世界のホンダ」はなく、単なる町の発明家に終わっていたでしょう。(またそのような2人の事業に対する姿勢が、今のホンダの社風、経営哲学を形作ったと言えます)


「自分が不得意とする能力を持った人(自分と違ったタイプの人)を集め、活かしていくこと」が、経営者にとって大切なことです。
 後継者は既に事業が形作られ、既存の組織・部門を引き継ぐことになります。そのため、特に「経営戦略力(経営センス)」を学び、経営のバランス力を身につけることが必須であるといえます。 


3.後継者の経営能力の習得のみが企業を永続させる

 会社をマネジメントするとは、会社全体の経営バランスを取ることです。そのため、後継者育成の理想的な方法は、全部門を5年〜10年くらいの時間をかけて経験、育成することです(前号参照)。
 しかしそこまでの余裕がないのが中小企業の実態です。そのため外部の専門機関で他社幹部と交流させながら(人の中で)マネジメント力【経営戦略力(経営センス)】を学ばせることが一番効率的で、上手くいく方法です。

 残念ながら先代経営者(同族経営の場合は親)は先に死ぬのが、自然の摂理です。引退後も会社が存続し続けるかどうかを最後まで看とってやることはできません。しかし良き後継者を育成することが、名を残し、死後も会社を存続させる方法です。

 後継者育成と事業継承は時間との闘いです。「なんとかなるだろう」では、どうにもならなくなるが事業継承問題です。まずは後継者育成と事業継承のスケジュール作りくらいから取り組まれてはいかがでしょうか?



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