2019.11 経営コンサル事務所ニュース



 永続発展する企業の条件の第37話です。

  現在日本では、人口減少・少子高齢化が進んでいます。それに伴い中小企業についても高齢化が進展し、引退を考えたときに事業継承に悩んでいる経営者が増えてきています。では、どのように対応すればいいのか?
 前号まで後継経営者の育成についてお話ししてきたが、今回は引退を決めた経営者の選択についてと、事業継承の一つの支援事例(「引退を決めた経営者の選択と事業継承の事例」)をご紹介します。



1.引退しようとする経営者の選択

 残念ながら人はいつか死ぬのが、自然の摂理です。どんなに優れた企業の経営者であっても、いつか引退する時が来ます。引退した後の「事業をどうするか」を自ら決めなければなりません。引退することを決めて、事業継承を考えたときの選択としては、下図のようなものがあります。


 後継者が確保でき、事業承継に向けて準備や育成に取り組めれば最良です。中小企業では「親族(多くは子息) 」への継承が第1の選択となります。しかしそれが難しい時は「親族以外」から選ぶことになり、その場合は「内部昇進(社員)」「外部から招く」ことになります。
 しかしそれも難しい時は「事業売却」「廃業」という選択になります。事業売却が難しい場合は、廃業ということになります。さらに廃業に向けての事前準備ができない場合には「倒産」ということになります。中小企業の経営者が引退を決めるとき(事業継承)は、必ず上記のどれかになります。

 次に後継者選びと事業継承の支援をしたA社の具体例をご紹介します。



2.事業継承の支援事例(後継者候補の選定と後継体制づくり)

 A社の社長は一代で建築会社を起して事業を大きくしてきました。しかし子供がおらず、事業継承に悩んでいました。以前親族以外への継承を考え、金融機関から後継者候補を招き入れたが、上手くいかなかった(業界経験不足と社内の人間関係構築が上手く出来なかったため)。
 年齢も60歳半ばを過ぎ、残された時間を考えると事業廃業も考えていました。社長と話をすると、自分が産み育てた会社は子供のように愛着があり、やはり自分の考えや会社のことを理解している人に継承し、後世に会社を残したいという強い思いがあった。そこで、社長の最後の責任と覚悟して、社内から事業を継承できる人を見つけることにした(上記の図の「内部昇進(社員)」になります)。

 まず後継者候補を見つけるために、役員と若手管理職を集めて、「経営のバックボーン構築研修」(研修内容は過去のニュース記事を参照)を実施し、会社の現状認識と将来ビジョン作りを行った。社長はオブザーバー(観察者)として参加し、参加者の討議や発言、態度を見て、若手管理職から後継者候補を3名に絞り込んだ。

 次に外部の経営幹部研修に役員と後継者候補を一緒に参加させ、後継者としての教育を受けさせた。役員と候補者を一緒に研修に参加させた目的は、役員からの反発を防ぐとともに、彼らの一体感を高めるためです。それが、その後の事業継承をスムーズに進める大きな効果となった。現在A社では事業継承が問題なく進み、候補者候補の1名が社長となり、残りの候補者が役員となって新社長を支え、事業を順調に伸ばしている。一時は事業継続を諦めていた社長は引退し、現在は顧問となって会社の行く末を見守っている。

 人は誰もが死から逃れられないように、経営者である限り事業継承からは逃れられません。なんとかなるだろうでは、どうにもならなくなるが事業継承です。事業継承は時間との闘いです。まずは、事業の継承(引退する)にあたりどのような選択肢と可能性があるのかを考えるところから取り組まれてはいかがでしょうか。



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