2020.1 経営コンサル事務所ニュース



 永続発展する企業の条件の第38話です。

 日本社会の高齢化が進む中、中小企業経営者の高齢化が進展しています。「事業承継ガイドライン」(H28年12月、中小企業庁)によると、経営者のうち最も多い年齢は、平成7年には47歳だったのが平成27年には66歳となり、この20年間で約20歳も上昇しています。中小企業経営者の引退年齢の平均が67〜70歳であることから、今後事業承継の時期を迎える中小企業が多数発生すると考えられ、事業承継は重要な経営課題となってきます




1.事業承継成功のための経営スタイルとは

 先代経営者の多くの場合は「俺に付いてこい」型の「ワンマン経営スタイル」が多い。成長段階であればワンマン型のリーダーシップのあり方がふさわしい。しかし、後継者が先代経営者と同じワンマン型のリーダーシップを取ろうとしても無理な場合が多い。むしろ後継者は「組織経営型」の経営スタイルに変えた方が上手くいく場合が多い。また組織が固まり、成熟段階への対応としても「組織経営スタイル」の方が企業の成長に結びつく。

 「組織経営」とは、トップの想い(目的・目標)を中心とした合議による経営スタイルです。そして、ワンマンから組織経営に変える上で最も必要なことは、@明確な共通の目標や目標を持つことと、Aトップを含めた経営チームの自律化と協働意識です。これはスポーツと同じで、いい成績を上げるためには、ゲームに勝ち、優勝するといった目的・目標が重要であり、さらにプレイヤー各個人が状況に応じて自ら判断して自律的に動けることが必要です。そのためには、まず共通の目的と目標を持って、同じ方向性を目指している人たちをチームにする。そして全ての人たちが1人ずつ自律化して組織の目的にコミットメントする。それが組織経営づくりの大前提です。

 次に、事業承継を期に、ワンマン経営から組織経営スタイルへ脱却した会社の事例をご紹介します。



2.ワンマン経営から組織経営への脱却の事例

 地方の製造メーカーA社から「経営理念・ビジョンづくり」の支援を依頼されたことがあります。現社長からの直接の依頼でした。その主旨は「社内プロジェクトチームを作り、自分が引退した後の会社の将来像・ビジョン作りをアドバイザーとして方向づけと指導をしてほしい」という要望でした。その背景には「息子への事業承継の準備」という意味合いが含まれていたので、常務である息子を加えて「プロジェクトチーム」を組みました

 プロジェクトが始まると、メンバーの総意として会社の将来の方向について、息子の常務が決済せざるを得ない状況が多く出てきます。これはいわば「社長として経営判断する」模擬練習であり、結果的に常務に経営者教育をする形になりました。
 さらに、プロジェクトを通して、常務は自分がトップになったときの体勢を担う次期経営幹部たちの性格を把握することができた。一方、経営幹部候補は、次期社長である常務の性格や事業に対する考え方を理解する良い機会となりました。
 結果的に、プロジェクトチームが事業承継後の組織体制の基盤となりました

 プロジェクト終了の4年後、常務は社長になりました。そして他の参加メンバーは、役員・経営幹部となって社内の重要なポストについて新社長を支え、順調に業績を伸ばしています

 事業承継は時間との闘いです。「その内、なんとかなるだろう」では、どうにもならなくなるが事業承継です。事業を次代に承継するには、後継者とそれを支える経営幹部を育成すること、及び経営スタイルを組織経営に変えることが重要です。
 まずは後継者育成と継承のための組織体制の計画作りくらいから取り組まれてはいかがでしょうか?



過去の事務所ニュースです ⇒ 事務所ニュースのまとめ
●記事に関するお問い合わせ・過去の事務所ニュースの送付希望の方は、
 株式会社トラストブレイン 秋月まで
 香川県高松市三条町209-1
 info@trustbrain-c.com